人は制度から自由になれぬのか

「大奥」よしながふみをまとめ読み。
二巻が一番好きなので、画像はそれを貼っております。

3代将軍家光の時代、若い男子が中心にかかる「赤色疱瘡」により、男性の人口が激減。家光も死亡。春日局は、男色家だった家光が唯一残した女児を秘密裏に将軍に、男性を800人集めた大奥を作り、その存続を図る。

大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))

大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))

二巻は初の女将軍家光と、還俗させられ、彼女のお相手をする有巧の物語。
ものすごくいい。純愛なのです。純愛とかキライなんちゃうん。といわれそうですが、好きなのです。何がどういいのかは本編をぜひ読んでいただきたいのですが。好きなのに添い遂げられない。その理由が丁寧に描かれており、でも、感情というのはそないにカンタンに処理はできないということもまた描かれているのです。

ここは本誌で読んでいたので、いいかな、と思ってたけど。改めて5冊読み通す中で、一番好きなところなのでありました。

武家社会というのは、血で家を継いでいく。女性は子どもを生むためだけの道具で、性的な喜びを感じることさえ禁じられていた。それが、この「大奥」ワールドでは、女性が中心。さぞや楽しかろうと思いきや。男は何もしなくなり、「種馬」状態になりさがるという。そして女性は全てをするのだけど、「男を買う」という。

結局、「家制度」というものを、支えるためには「血のつながった子ども」が必要なのであり、それが母系であろうと父系であろうと一緒なのよ。ということか。単純に「とりかえばや」すればいいということではない。というのは、フェミニストよしながふみならではの設定。

それはおそらく、今の社会にもあてはまることで。
女が男にとって変われば「問題は全て解決する」わけではない。
ま、そんなこたもうみんなわかってんだよね。

何がわれわれの足かせになっているのか。てことくらい。
でも、誰もそれを変えようとしない。なぜならば。おそらく、その足かせをはずせば、この国を根底から支えている「何か」が瓦解するからだ。

何か。とはおそらく「制度」だ。
真のジェンダーからの解放は、これすなわち、現行の様々な制度そのもののあり方を根底から書き換えるしか方法がないと思う。だから。ジェンダーという言葉は危険思想として、まず教育現場から葬り去られようとしている。
ま、そんなパワーあればとっくにフェミ革命とか起こってるかw

制度外は愛で満ち溢れてるわよ、みたいな能天気なことを言ってる場合か、あんたら、と誰かに向かって言いたくなるけど。
たぶん、今制度外なことを、やってまあすとカミングアウトしたところで、
アホボケカスと罵られるくらいで、得なことは何一つないだろう。

なんてことを一切よしながふみは声高に語らないのだが。
元フェミのやさぐれ女はかぎとってしまうのだった。
間違ってるとか正しいとかいうのは、こうした感想文にはふさわしくないので、そのあたりのツッコミはごめんこうむるけど。
感覚として、そう思えてならないのは。解釈の違いを超えた。
個人の自由だよな。多分。